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Channel: GNO2及びGNO3 連邦 情報部 こっそり日記
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白暮のクロニクル 5巻 [ゆうきまさみ]感想、オキナガ“居住施設”の悲劇。これはやるせない…

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 架空の“長命種”、吸血鬼と似た特徴の種族『オキナガ』を巡る、厚生省職員の物語。

『せめて、魂だけでも出してやりたかったんだ』。新レギュラーも登場

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※画像右下隅クリックで拡大。

 今巻は、オキナガを『管理』する為の、事実上の収容所のお話。
 といっても“出られない”以外は立派なものという辺り、なんとも日本人的なものを感じますね。
 今まで数百年と、ここ百年ですっかり様変わりした戸籍という制度

 役人は、彼らを外に出すわけにいかず、彼らも外に出たところで何が出来るわけでもない。けれど……。

殺人事件
 今巻は、前後編なのか?と思うくらい何も起きなかったですが、最後でどんでん返し。
 思えばきっちり伏線も張ってあったというワケで
 面白かったです。

 面白く、やるせない話でした。

『羊殺し』を知る男娼、60年眠り続けるオキナガの少年

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 ラストで人知れず目覚めてましたが、さてどうなるんでしょうか?

絶望の楽園
 オキナガを管理すると共に、彼らに『人間社会で暮らす』為のスキルを学ばせる居住施設を訪れた伏木。
 人と暮らせるスキル、それさえ得れば出る事が出来るのだが
 年長者である彼らには、案外難しい。

 多くは昔の時代から、隠れ生きてきた人間であり、ひらがなすらキツい程に学がないのだから。

 ある日、入居オキナガの一人が“自殺”してしまったのも
 ここから出られないが為だった。

 野山を無戸籍で過ごせる時代はとうに終わった事を、彼は受け入れられなかったのだ。

 また伏木は、雪村が『オキナガ化』させた、羊殺しの目撃者の少年が、60年も眠っている事実を知る。

『お母さん』と娘

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 今巻、すごく切なかったのがコレで、一見すると、いかにも気難しそうなお婆さんだったのが
 実は『娘』、母親思いの優しい娘さんだったお話。

 生き別れ、母はオキナガ化して生きていると知って以来、毎年会いに来ているそうです。

 けれど『孫』も『ひ孫』も、彼女を怖がって会いにこない。
 自分が死んだら、母は一人ぼっちになる。

 ああ、そういう事情だったのかと解って来る流れといい、切ないエピソードでした。

『あんたと知り合って25年、俺も70歳だ』

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 また、借金で首が回らなくなり、ちゃんと学があるのに“外”へ出ようとしない、なんてオキナガも。
 ていうか、この爺ちゃんってば絶対ケンカする事自体が目的ですよね!
 この爺ちゃんが死んだら、寂しいだろうな…。

 収容所と言っても、外で暮らせるだけのスキルが身に付けば、外に出して貰えるシステム。

『彼らはひどく警戒心が強いよ、“昼間の人間”に対してはね』

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 元々、多くは「戸籍」といったシステムがユルかった時代から、野山で生きてきた人たちが多く
 現代には到底そぐわず、物書きなんかも殆ど出来ないし
 今更、やる気にもならない。

 長命種といったって、知識を高めていくような生き方をするかというと…。

 こういう風に『そういう常識がある世界』を創作するのが、ホント凄いなと思います。ゆうき先生。

今巻の久保園さん

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 今巻、貴重なタメ口になんかグッときた久保園さん、冒頭でもまた良い事を言うの図。
 価値観の違いは当然だ、という出発点はとても大切ですよね。

収録

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 恋のライバル的な新キャラですが、どこかうさんくさく、敵対組織側っぽい印象も。

 ビッグコミックス「白暮のクロニクル 5巻」。ゆうきまさみ。
 週刊ビッグコミックスピリッツ連載、小学館発行。
 2015年1月発売(前巻2015年1月)

 第5集「絶望の楽園」シリーズを収録。



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