夢破れ、なお笑ってみせる駒場。決意する御影。夢をとりまく第九話
※原作4話分を1話に。雨竜先輩の話は次回やると信じたいですねー。
駒場の夢だった駒場牧場が離農する一方、自分の夢の為、実家を継げないと宣言する御影。
夢を諦めざるを得ない駒場、夢を諦めたくない御影
コメディもいれつつ、やはり重い展開……。
傍から見れば完全に余計者な八軒ですが、それでも「お互い、良い友達を持ったよな」と言いきれる。
八軒は懸命だと思いますし、思っていたいです。
何も出来なくたって、一緒に悩んでくれるだけでも、きっと力になっているはずですから。
■「わかろうとする努力はやめたくない」
御影の言葉を下敷きに、食い下がる八軒の男振りが光る。
が、やっぱり学生ではどうにもならず、からっぽになってしまった牛舎が寂しい。
アニメ一期での「豚丼たちがいなくなってしまった豚舎」を思い起こさせる、からっぽな牛舎。
だからこそ、駒場牧場最後の牛乳を「旨い」としみじみ言う八軒に対し
当たり前だバカ野郎! と返す駒場が快い。
変わらない強さが頼もしい。
ありがとな、の飾らない一言が嬉しい。
でもそんな強さも、きっと無理に支えてるだけなんだろうなと思うと辛い。……だから御影も頑張る!
御影『夢を諦めて、これで良かったって、一生自分をごまかすのはもっと怖い…』
だから、御影は立ち向かう。
■二つの牧場
駒場家の離農は止められなかった。
それでも、せめて見届けたいと願い出た八軒と御影に、本当に来たのかと駒場はガンを飛ばす。
一見、いつもと変わらない駒場。
けれどそれは、とりあえず気持ちをつないでるだけじゃないかと八軒は思った。
今の駒場は、夢を失って、家族の為に金を稼ぐという目標だけを支えにしているんじゃないのか。
自分の将来への考えが、すっぽり抜け落ちているんじゃないのか、と。
自分にも似たような経験があったのだ。
自分の一番やりたい事を諦めるのは、やっぱり怖い。
だから御影は夢を諦めたくないと思った。
傍らの八軒に励まされ、御影は生まれて初めて、真正面から家族に立ち向かう。
自分には夢があるから、御影牧場は継げません、と――――。
『……だから、嫌だったの…………』
一連の御影が可愛い。そしてマロ号が存在感がまた良い。
■断れない男
駒場牧場が倒産し、その借金が御影牧場にも行くと知った八軒は、それでも御影の手を取った。
何も出来ないと解っていても、せめて相談に乗るくらいしたかったのだ。
そして、だから知られたくなかったのだと御影は泣いた。
駒場だってそうだった。
どんなことでも、我が事のように悩んでしまうと知っているから、言えなかったのだと御影は涙する。
その気持ちが嬉しかったから、御影は泣いた。
泣いて泣いて、これからは相談するよと涙した―――。
御影『―――私は、そういうところが好……』
これからは相談するよ、と本当に嬉しそうに泣いてくれる御影に、八軒は思わず日和ってしまう。
俺なんか、競争から逃げてきた男だし……。
すると御影は微笑んだ。
俺なんか、なんて言っちゃダメっしょ。
相談に乗ってくれるだけで嬉しい。だって八軒はいつも一生懸命だし、そういうところが好……
部長『おつかれ! 鍵かける……ぞ…? …………鍵、かけようか?』
このあとめちゃくちゃ相談に乗った。
■「金があれば……」
が、ここで依田現部長が現れるファンサービス。
ちょうどいいのでそのまま相談に乗ってもらった八軒は、更に驚かされる事となる。
その借金によって、御影牧場も倒産するかもしれないらしいのだ。
そもそもこの問題は簡単に解決できる話ではない。
できれば誰も苦労しない。
金さえあれば…………。八軒、またも苦悩を背負い込む。
別府『俺らが考えるレベルじゃ、たかが知れてるんでない』
八軒『無力だ……凹むわ…』
原作読者は、後に西川の本気を思い知る事となった。この西川容赦せん!
■無力
かくして八軒、方々を回り、本を紐解き、稼ぐ手段を探すもどうにもなりません。
まさに「俺らが考えるレベルじゃどうにもならない」状況。
付加価値を付けて売るにせよ、ベーコンもチーズも膨大な手間と期間が懸かるのはご存知の通り。
むしろ
だからこそ駒場の父さんも沢山の設備投資をし
借金してまで土台を作って稼ごうとして、その矢先に亡くなってしまったんですよね……。
※なお原作では、このパートは文字通り方々で聞いて回っていましたが、尺の都合で少し短めに。
相川『金があるってありがたいことだよね』
なぐりたい、この笑顔
■環境
そして相川。大学を目指してるだけに、それがどれだけ恵まれた環境かと思いを馳せます。
今時見上げた少年です相川。
そんな相川がいる一方、東大やめちった♪ をやらかしたアニキってば!!
うんこ兄貴!
うんこバカにすんなや! なんだこの農業的会話!
なおこのパート、農家の借金問題にも触れましたがそこも尺でカット。興味深いだけに残念。
八軒『御影ンとこはさ、もし大学行くなら学費どうすんの?』
その夕方、御影家の経済状況を聞いた八軒は、さらに鬱々とすることになる。
元々収入がそう多くなく、牛でも売らないとダメかも、と。
御影は大学に行く気はありませんが…。
経済動物と言っても、慣れ親しんだやつらを売るのは、寂しい。
■「もう本当にどうにもならない」
また「牛を売る」と、牛乳が取れなくなるので生産性が下がります。
それでも手っ取り早く金を得る最善策。
……そんな話をしていると、いよいよ駒場牧場の「競売」が決定し、離農が決定的になってしまいます。
ひい婆ちゃん『給料……、給料、使ったかい?』
ホント良いばあさまである。
■八軒、吐露する
早朝の為、前日から御影家に泊まりこむことになった八軒。
バイトのときに、給料を受け取る、受け取らない、とモメてしまった八軒を気遣うひい婆さまや
離農は見世物じゃない、と突き放す御影父と再会する。
自分は解っていないかもしれない、けれど解ろうとする努力はやめたくないと伝える八軒。
徹頭徹尾八軒は部外者です。
でも、それでも友達として見届けたいと、八軒は関わり続けますが……。
職員『それではお預かりします。―――お疲れ様でした』
牛の目線に移り、そこから駒場が見えなくなっていくのが辛い。
■牛舎掃除
離農、借りていた高価な農機具を返し、牛を全て売り払う駒場家。
その現場に八軒は立ち会う。
夏のバイトの時、年寄り牛になるまで可愛がっているんだ、と駒場と話していた牛達が売られてゆく。
牛たちも「人間が自分達を大事にしてくれている」と思ってくれているから
何も知らず車に乗り込んで行く。
空になった牛舎を、八軒達は心を込めて掃除した。
これまたいつかのように、「バイト代出ねーぞ」と軽口を叩きながら、綺麗に掃除する。
牛が居なくなった牛舎は、まるで別物のように寒かった―――――
駒場『おう、飲んでけ。――――駒場牧場、最後の牛乳だ』
やがて五人と一匹は、駒場が持ってきた最後の牛乳を一緒に飲んだ。
今朝絞った駒場牧場最後の牛乳は、旨かった。
旨えなあ…
当たり前だ馬鹿野郎!
いつものように一喝し、「当たり前だけど、最高の褒め言葉だ」と駒場は笑う。
こうして、駒場牧場は終わりを告げた―――。
ED「オトノナルホウヘ→」
遠く離れた場所にいる時も 僕らの声が届きますように
迷ったときはオトノナルホウヘ→
笑う門にはちゃんと(ちゃんと) 福はやって来るから(Yeah Yeah!!)
泣いて腫らしたその目だって ほら笑顔が似合う(Ah Ah Ah Ah)
息が詰まるこんな世の中で 出会えたんだ(Oh Oh Oh) 色とりどりの世界を一緒に見に(ホイ!) 行こう
頑張り屋の君だから 壁にもぶつかるでしょう
でももう平気 ひとりでは背負わないでいいんだよ(Yeah Yeah Yeah Yeah)
君が笑えば 僕も笑うから(Yeah Yeah!!)
めぐりめぐりまた違う誰かのとこまで(Fu!!)
遠く離れた場所にいる時も 僕らの声が届きますように 迷ったときはオトノナルホウヘ→
泣いてないで一緒に笑おうと励ますエンディング。
誰も泣いていないけれど、でも、遠く離れてゆく駒場に届くよう、歌っているような気もしてきますね。
『八軒君ごめん…、迷惑かけるかもしれないけれど、もう少し、勇気貰えるかな…』
それからすぐ、気落ちも見せずにアルバイトに向かう駒場を見て、八軒は思った。
あれは中学時代の自分と同じなんじゃないか、と。
■目標
本来「将来の為に勉強する」はずなのに、目前のテストで高得点を取る為だけに勉強してきた八軒。
そうやって、親の期待に応えなきゃと奮戦していた時期があった。
夢、将来を考えず、目前の事だけを考え続けているんじゃないのか。
同じように、周囲の為に金を稼がなきゃって思いで自分を埋め尽くして
将来の事を考えなくしているんじゃないのか、と。
からっぽになっているんじゃないか、と。
■夢
夢をあきらめるのは怖い。
でも、夢に立ち向かえるはずなのに「それをしない」のも怖い。必ず後悔するはずだから。
御影は本当は、馬に関わる仕事をしたい。
家族にそれを言いたい。
その勇気を八軒に貰い、御影は家族に立ち向かう――――
祖父『うん。まず、馬、全部売るべ』
馬好きだといった爺ちゃんの即断。飄々としてるいるがたいしたお人ですわ。
■御影、吼える
借金1500万円を背負い、経営の効率化を考える御影家。
でも大丈夫、そのうち御影が家に入るから―――、そんな御影家の茶の間で、一世一代の告白が迸る。
継げません。私には夢があります―――!
まるで娘を促すように、無言で見つめていた父。
その目を半泣きになりながら見つめ返し、支えると吼える八軒に促され、御影は遂に告白する。
家に負担が掛かるからずっと言えなかった夢を、御影は遂に告白する―――!
「巻き添え上等、一緒に頭ふまれてやるよ!」
前回、南九条に「周りに気を使って感情を殺している」と言わしめた御影。
そんな彼女にも、譲れない夢がある――――。
駒場の「ありがとな」が印象的だった駒場編から、二期最終シリーズ御影編へ。
■原作
第8巻65~68話の4話分を1話に再構成。
また、「わかろうとする努力はやめたくないよ」は、6巻50話での、馬術部試合の台詞ですね。
その元を辿ると、1巻6話での「馬の気持ちなんて解らない」という一言から。
解るわけない事だって思っても、それでも諦めたくはない!
御影が夢を語り、諦めようとしたのは3巻18話。
あのとき「期待してる家族をガッカリさせたくないから」と諦めようとした彼女が、今度こそ立ち向かう!
既存シーンを踏まえた展開が多いので、読み直すとこれまた面白いのが良い所。
全11話とのことですが、原作9巻73話辺りで完結ですかね。
次回、第10話。