乱歩奇譚 Game of Laplace ♯5「芋虫」感想。凶行の理由、“始まり”。理不尽

頑張り続けた意義も、心の安らぎも、両方失った末の凶行。理不尽…！

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　さち子くんの件も今回も、彼女達の人格も頑張りも関係なく、「可愛いから」「妹だから」と理不尽に殺され
　信じようとした正義、心の安らぎの両方を失うカガミ
　こんなのあまりに理不尽すぎる…。

　そして、「警察」「抑止力」のどちらも信じられぬ中、また新たな模倣犯が生まれ――――

■ドミノの始まり
　カガミも、最後に出てきたさち子くんのお父さんだって、やりたくてやったわけじゃない
　善良な、或いは普通の人だったのに…

　カガミを止められなかった、ナカムラさんの気遣いも心に染みる。

『私のような者が警官となった時から、結末は、決まっていたのかもしれません』

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　独白回、謙虚で自嘲的で、生真面目さが溢れる独白の回。

■「歯止め」の喪失
　カガミは、「年齢」「心神喪失」などの理由で不起訴となった犯罪者を、警察の地位で調べあげ
　私的、公に断罪し、同じく「不起訴者」を恐怖させる
　抑止力たらんとしていた。

　その上で、彼は確実に捕まると考え、だが「二十面相」は続くはずだと予想する。

　彼は、凶悪犯が五割も「罪に服さない」事に思い悩み
　あまつさえ、彼らの標的となって妹を殺された事が引き金となって、事件を起こしたのだ。

　己と同じ悲しみを味わった者はいかに多いか。

　自分の「断罪」は必ず引き継がれる。
　カガミの予想は現実となり、影男事件の「ワタヌキ」が、さち子の父により殺害される。

　次回、♯6「地獄風景」

カガミ『カガミ、ちゃん？私のことですか！？』

ナカムラ（上司）『他に、誰が居るんだい？』

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　ああ、やはり「動機」は妹さんなのか……。

■誓いと始まり
　カガミは早くに両親を失い、妹「トキコ」を育て上げながら、苦学してキャリアとなった青年だった。
　妹もまた、苦労性の兄に「自分自身の幸福」を望むよう
　気遣う優しい少女で―――

　私はこの職場で、警察官として人々を守るのだと、強く誓っていました――――。

　上司は「ナカムラ」。
　軽妙な上司に、翻弄されながら始まった警官生活。

　生真面目な彼の、幸福が溢れる一幕―――

カガミ『刑事になって解った。悲しい事件は多い、そんな人を減らしたいんだ』

トキコ『でも、それで兄さんが身体を壊したりしたら……』

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　カガミは、現代の凶悪犯罪の多さを深く知るにつけ、そんな悲しみを減らすためにと
　身を粉にして働き始めるが――――

　それで兄さんが身体を壊したりしたら、私は悲しくなるよ？　

　そんな「歯止め役」がトキコさん。
　天涯孤独、でも兄と妹、互いに心配しあって幸せに暮らしていた、良い兄妹だったのね……。

ナカムラ『これが初検挙か…、もーぅ、カガミちゃんは卒業かな？カガミ君』

カガミ『は、ハイ！今後も一層努力っ！』

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　妹です。“今日は夕飯を作っているから、絶対に帰ってこい”と。

■やりがいと理解者と
　その後も、傍からみれば頑張りすぎ、けれど彼は彼なりの手ごたえを持って仕事を続け
　上司も彼を認め、妹は彼をよく支え――――

　事件、問題は山のようにあった。けれど私は、人を守る仕事に、やりがいを感じていました―――。

　帰ってくるよう「口実」を作る妹さん
　ナカムラさん、良い上司！

　こんなの、絶対幸せな日々じゃないですか……、ですが…。

カガミ『その意識に、揺らぎが生じたのは、あの日からでした―――』

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　しかし、捕まえても「酩酊状態」「精神病」等、責任能力が問えない場合、不起訴となると知った
　裁判にすらならず、数ヶ月の措置入院のみ。
　不起訴率は、実に五割。

　殺人犯の半分は、捕まってもすぐ野放しになっちまう。

　そして不起訴者の再犯率は、ほぼ4割――――

カガミ『悪い、ちょっと仕事でイヤな事があったんだ』

トキコ『まさか、職場で苛められてるとかっ！？職場に文句いってあげる！』

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　大学に通いながら、遅くまでデザイン試案に兄の世話……。

■大丈夫
　だが自分の仕事に疑念を持っても、信頼する妹の言葉が、とても大きな支えとなった。
　迷った時、気取りなく大丈夫だといってくれる存在
　どれだけ救いとなる事か

　大丈夫だよ！兄さんは正しく一生懸命頑張ってるもんっ！！

　妹さん自身、デザイナーの卵として奮戦中
　頑張っても報われない

　けれど、必ず報われると信じ、頑張り続けるそんな子だったのだ……。

ナカムラ『――――二十面相って、知ってんだろ？』

カガミ『ええ、去年、世間を騒がした犯罪者ですよね？』

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　初対面なのに、インパクトがデカイ中学生。

■飲まれるな
　そんな二年前のある日、「正義」に惑うカガミに、ナカムラは「傲慢な正義」の例として
　二十面相の事を伝え、諭そうとした

　正義って言葉には、気をつけろ？

　アケチと出会ったのも同じ頃。
　彼は、カガミを最も信頼できる刑事だとし、二十面相での協力を要請。

　だがそんな生真面目さが危うい…！

ナカムラ『これからは、敬語を使わなければなりませんなぁ？』

カガミ“警視”『止してくださいよ、今まで通りで良いですっ』

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　やがて、ますます仕事にのめりこんだカガミは、キャリア＝幹部候補生ゆえナカムラを追い抜き
　若くして「警視」となるのだが――――

　上下関係というものを曖昧にしたら、組織は立ち行かなくなります。

　真面目なカガミ
　彼に、「上司として」の意識を持たせようとするナカムラ

　ホント、可愛がってたんですな…

私は、仕事にのめりこむことで、疑念から目をそらしていただけだったのです

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　寝たまま、兄の上着に笑顔になる妹。かわいい。

■きっと
　無論、カガミも自分が歪みつつある事は知っていたが、ナカムラとトキコが歯止めとなった。
　同じように身を粉にし、なお報われぬ妹

　ああ、これだけ努力してるんだ…、きっと、報われる。

　寝落ちしていた妹
　自身に、言い聞かせるようなカガミ

　届かない目標を目指し、頑張って頑張って、努力し続ける兄と妹。

　そりゃ出世も早いはずですわ…。

スナガ『俺はアレだ、心神喪失ってヤツで、無罪になるんじゃねぇか？』

『安いもんだなぁ、ええ？人間の命ってよう……』

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　スナガは、この時、「殺される！」って思った事を逆恨みしたんでしょうか……。

■人面獣心ども
　だが、三話で捕えた「ワタヌキ」や、最初から心神喪失を期待し犯罪を犯したスナガ等
　人の心を持たぬ犯罪者は、あまりに多かった。

　不起訴や無罪になる可能性があっても、逮捕した方が犯罪は減らせる…、根絶は無理でも。

　傷付くカガミ
　飄々と、しかし「現実的な」懸命さを持っていたナカムラ

　ナカムラの苦悩の結論に、カガミは納得できない。

　こうも人面獣心の輩が野放しになるなら、法の裁きとは何なのだと――――

トキコ『なんと、このあいだ私の作ったデザインが、銀賞を取りましたーっ！』

カガミ『やったじゃないか！良かったな…、本当に……！』

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　まるで暗いカガミの心に差し込むような光、人間的な温かい食事、演出も本当に素晴らしかった。

■最後の晩餐
　しかし、同じく頑張っていた妹、トキコのデザインがようやく認められたと聞き
　カガミは久々の幸福を噛み締めた

　兄さんが笑ってるの、久しぶりに見た気がする♪

　フラグ過ぎる…
　珍しく、テンションの高いカガミ。

　そしてカガミは、「明日は早く帰る」と約束するのだったが――――。

ナカムラ『＜入院中のスナガが脱走しました！＞』

『＜“復讐に、カガミケイスケの家族を殺す”と！妹さんとはご一緒に？＞』

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　だが真面目なカガミは、翌日の夜も、ケーキ片手に遅くまで聞き込みに励んでしまい
　その隙を、先日捕えた「スナガ」に突かれ――――

　やがて、妹は発見された。

ナカムラ『しかし、“損壊”が激しく……』

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　風に吹かれ、ドレスの中が、からっぽである事が……。

■「抑止力」の仮面
　スナガは、意図してか意図せずか、あの「銀賞のドレス」に包み妹を晒し者とした。
　妹の、努力と幸福の象徴をこんな形で……

　無駄だったのだ、無意味だったのだ！法で人を守ることなど出来ない……！

　カガミは凶行に走った
　だが、自分は必ず捕まるだろうと覚悟もした

　だからこそ一週間で十五件、死に物狂いで「断罪」を下し続けた。

　しかし疑問は残る。

ナカムラ『……キミが殺した中に、スナガは居なかった。殺さなかったのか？』

カガミ『はい――――、簡単に、殺すはずがない』

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　カガミは、捕えたスナガを「妹の最期と同じ姿」にすると、延命処置を施した上で
　薬品漬けにして、じっくり殺していた
　生き地獄

　その様は、まるで「芋虫」のような――――。　

　因果応報を旨とするカガミ
　彼は、自身も極刑とするようナカムラに頼み込み、退席してゆくのです――――

カガミ『だが、二十面相は死なない―――』

ナカムラ『バカ野郎が…、お前はカガミちゃんのままで良かったんだよ…！』

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　オープニングで、コバヤシくんが「仮面」に囲まれてたのはそういう……。

■報われない連鎖
　あのまま、ヒヨッ子で世間知らずな「カガミちゃん」のまま、仕事に邁進していたなら……。
　取り返しのつかぬ事件は、こうして終わる
　けれど

　よくも娘を、よくもサチ子を！断罪だ、断罪だ！！

　懲りぬワタヌキを襲う凶刃
　今度こそ、人の心を持たぬ鬼畜は死を迎え、カガミの予言は成就します。

　けどカガミも「彼」も、決して望んでそうなった訳じゃない

　ただただ、理不尽を許せぬ故の凶行…！

次回、「地獄風景」。サブタイからしてもう……

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　暗い中で思いつめるより、温かいものでも食べて、笑いあってた方が似合っていたのに……。

■連鎖の始まり？
　あの、「抑止力」の発端を描いた回ですが、もう冒頭の幸せ風景からして……。
　影男事件から、連続するシリーズにもなっており
　次回につなぐ回でもある

　遺体も、無惨さを「感じさせる」ようで、悲しく感じました。

　主張も、アニメとして誇張されているにせよ
　日頃、凶悪事件でも「心神喪失」「年齢」「数」で、死刑とはならない事を思い起こすというか……

　抑止力としての「法」「刑罰」、それが通じない人間がいるなら？

　上司として部下として、人間味あるナカムラさんといい
　考えさせられる回だったよう思えます。